近年, 長引く不況により倒産する企業が増加している. したがって, 倒産を事前に精度良く予測することは, 融資・取引する企業や投資家においては重要な問題となっている. この倒産予測において, AltmanのZ-scoreに代表される従来手法では, 判別分析を用いているため, 現存企業数と倒産企業数が異なっている場合には精度が低くなるという問題がある. また, それらは一般的な経営指標を採用しているため, 近年起きている黒字倒産のような場合には, 倒産予測は難しい. 本研究では, そのような状況にも適用可能な, キャッシュ・フロー計算書のデータを採用した倒産予測システムの構築を行う. まず, 不必要な指標を削除するため, 因子分析を用いてキャッシュ・フロー計算書の指標を絞り込む. 次に, 個々の企業経営指標を評価するのではなく企業間の相互関連を考慮して経営指標を評価するため, 自己組織化マップ (SOM) を用い, 倒産予測を行う. さらに, 予測誤差を倒産企業平均や全企業平均との誤差と比較することにより予測精度を検証する. 最後に, AltmanのZ-scoreなどの従来手法と比較することにより, 提案手法の有用性を示す.