今春3月, 瀬戸内海航路高速客船くれない丸を供試船として, Waveless船型理論にもとづく超大型バルブの「船首波打消し」の実船試験が行なわれた。今回これを「水槽試験」・「実船試験」・「波形観測」の3篇にわけて報告する。以下はその第1部 (前篇) 「水槽試験」の報告であるが, ここでは他の2篇と異なり, 記述の範囲を今回行なわれた実船試験のみに限定しないで, くれない丸の計画当初から現船型決定の経緯にまでさかのぼり, くれない丸がその計画・建造・就航・実船試験の各時点において東大水槽におけるWaveless船型理論の発展の経過といかに交渉しあつたかをあきらかにすることに意を用いた。 Waveless船型理論では在来の水槽試験のほかに, 「波形分析」という新しい船型学的手法を重視する。今回も当然模型・実船の両方についてこの「波形分析」が試みられたが, この部分は一括して第3部 (後篇) 「波形観測」で取扱われている。 なお, 第2部 (中篇) 「実船試験」では, 中心となる速力試験のほかにZ操船試験と旋回試験とにもふれられている。