本論文は電磁偏向に関する基本的解析 (R. G. E. Hutterらによる) に出発し, 実際のブラウン管用偏向コイルの磁束密度分布測定データを整理した形でこれに適用し, 偏向磁界の作用によって生ずる各種収差の様相を見通しよく評価できる形に解析したものである. すなわち, まず偏向コイルのつくる磁界を等価斉一磁界と仮想非斉一磁界の重畳として近似し, 等価斉一磁界については電子幾何光学的に合理的な実効長と偏向中心位置を決定, 仮想非斉一磁界についてはコイルの軸に直角な断面内での磁界分布の曲率によってこれを代表させた.ついで, これら個々のコイルに固有な磁界に関する定数を用いて各種偏向収差を表わし, これを用いて磁束密度分布測定値から容易に数値計算もできるようにした.これらの結果は実際の偏向コイル設計上有用な資料を提供する.