セレウス嘔吐毒マーカータンパク質の検出システム(シングルパス・エメティックトキシンマーカー)の妥当性を検証した.わが国で発生した食中毒事例由来セレウス菌(84株),および市販食品分離株(21株),合計105株を1%ブドウ糖添加Casein–Glucose–Yeast Extract(CGY)培地で培養後,その培養液をキットのサンプル注入部に滴下し,検出ラインの有無を判定した.各菌株の嘔吐毒合成酵素遺伝子をPCR法を用いて検出し,陽性を示した株を嘔吐毒遺伝子保有株とした.食中毒検査で分離された嘔吐毒遺伝子保有菌58株は,本検出キットですべて陽性と判定された.一方,嘔吐毒遺伝子非保有株は,食中毒由来株では26株中2株,食品由来株21株中1株が陽性を示した.これら3菌株の毒素産生性を,HEp-2細胞を用いて検討したところ,毒素は検出されなかった.メーカーの報告によれば本イムノクロマトキットは,CGY培地による食品の培養液からも嘔吐毒産生セレウス菌が検出可能であるとのことから,食中毒検査時だけでなく,食材や調理食品中の嘔吐毒産生性セレウス菌のスクリーニングにも使用できると考えられた.