国産チーズの製造工程において,黄色ブドウ球菌増殖を制御することを目的に,同菌の接種試験を実施した.全工程より黄色ブドウ球菌の増殖可能な温度帯にある工程を抽出した後,工程内と同条件の乳,カードおよびホエイ中で増殖およびエンテロトキシン産生を調べた.その結果,多くのチーズでは顕著な増殖は認められなかった.また,フレッシュ系のナチュラルチーズでは,黄色ブドウ球菌の増殖が認められたが,エンテロトキシンは産生しなかった.これらの結果から,スターター乳酸菌の酸生成による黄色ブドウ球菌の増殖抑制が示唆され,原料乳殺菌後の二次汚染防止と酸度の管理が重要と考えられた.