回転振とう溶出機を用いたポリ塩化ビニル(PVC)製品から人工唾液へのフタル酸ジエステル(PAE)の簡易溶出試験を行った.PVC製品の試験片(表面積 15 cm2)と人工唾液(30 mL, pH 7 および 35℃)を 50 mL 容の蓋付ガラス管に加え,回転振とう溶出機で 300 rpm, 15分間振とうし,人工唾液に溶出したPAE量をUV検出器付HPLCにて測定した.フタル酸ジイソノニル(DINP), フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)およびフタル酸ジ n -ブチル(DBP)をそれぞれ約 45% 含むよう作製したPVCプレートからのそれぞれのPAE溶出量はほぼ同等であった.しかしながら,それらの化合物をそれぞれ約 13% 含むよう作製したPVCプレートでは,DBP溶出量がDEHPまたはDINPの2倍であった.さらに,15分間の回転振とう溶出によるPAEの in vitro 溶出量は,60分間のヒトのチューイングによる in vivo 溶出量と同等であった.本法を市販品の11玩具に応用したところ,PAEの溶出量は 15.6~85.2 μg/cm2/hrであり,相対標準偏差は 3~12% であった.