目的: 日勤・深夜勤の異なる勤務時間帯が看護師の睡眠に及ぼす影響を分析するため,加速度センサーを内蔵した携帯型活動量計(Actiwatch 2)を用いて睡眠の客観的な評価を行った.また,セントマリー病院睡眠質問票を用いた主観的評価を同時に行い,両者を比較検討した. 対象と方法: 総合病院に勤務する女性看護職員19名を対象にした.非利き手手関節にActiwatch 2を装着し,2日間の日勤,16時間深夜勤,休日へ続くスケジュールに合わせて5日間の連続記録を行った.2つずつの睡眠と仮眠:1) 装着2日目の日勤日の夜間睡眠(sleep 1),2) 夜勤中仮眠(nap 1),3) 夜勤明け日中仮眠(nap 2),4) 夜勤後休日睡眠(sleep 2)を定義し,解析に用いた.比較には,Actiwatch 2から算出される入眠潜時,起床時間,睡眠効率,睡眠率,そして,睡眠質問票から得られる睡眠の深さ,途中覚醒の回数,熟睡度,朝の機敏さ,睡眠満足度を用いた.また,睡眠評価と参加者属性との相関,Actiwatch 2と睡眠質問票との相関を調べた. 結果: Actiwatch 2を用いた比較では,日勤日睡眠より夜勤後休日睡眠において睡眠率が有意に高かったが,その他では有意な差はみられなかった.睡眠質問票では,ほとんどの項目において,日勤日睡眠より夜勤後休日睡眠,夜勤中仮眠より夜勤明け日中仮眠の方が良質の睡眠を示す結果となった.参加者属性では,年齢が高く,子どもの人数が多く,勤務経験年数や夜勤従事年数が長いほど夜勤明け日中仮眠に対する主観的満足度が低い傾向であった.睡眠の主観的評価は実質的な睡眠時間の割合を示す指標である睡眠率と相関が示されたが,仮眠の主観的評価は寝つきの良さも反映する指標である睡眠効率とで相関が示された.また,平日や休日の入床時刻が平均入床時刻から離れている対象者ほど夜勤中仮眠の主観的満足度が低い傾向であった. 考察: 客観的指標と主観的指標との相関が明らかになり,睡眠と仮眠では異なる側面が満足度に影響することが示された.育児に従事する看護師の場合,睡眠の質を高めるためには夜勤明け日中仮眠の質向上に取り組む必要があることが示唆された.また,平日や休日の入床時刻と夜勤中仮眠の満足度との関係が明らかになり,普段規則正しい睡眠リズムが確立されているか否かが夜勤中仮眠の質に関わることが示唆された.