目的: 本研究の目的は,産業安全保健分野における「参加型アプローチ(participatory approach)」の概念が持つ特徴を明らかにすることと,この概念の産業安全保健における活用可能性を検討することである. 方法: Rodgersの概念分析の手法に基づき,文献の中で参加型アプローチがどのように使われているかについて,属性,先行要件,帰結を抽出した.参加型アプローチに関して記述されている国内外の39文献を分析対象とした. 結果: 産業安全保健における参加型アプローチの属性として,【事業者と労働者が主体的に関与】,【良好実践を基盤に対策指向の低コストで多領域改善に焦点】,【合意形成を重視するプロセス】,【ネットワークを活用】が抽出された.また,先行要件として,【職場に存在するリスク】,【産業安全保健活動の困難性】,【職場や労働者の特性】,【職場のニーズ】であった.帰結として,【産業安全保健活動の促進】,【自主管理の強化】,【安全・健康な職場の実現】,【生産性やQOL向上への貢献】が導かれた. 結論: 産業安全保健における参加型アプローチは,『産業安全保健活動の促進や自主的な職場環境改善の継続を目指し,事業者と労働者が主体的に関与して,既存のネットワークを活用しながら行う,良好実践を基盤にした対策指向の低コストで多領域改善に焦点をあてた,労働者の合意形成を重視するプロセスである.』と定義した.事業者と労働者の自主的な産業安全保健を促進する上で,参加型アプローチにおける専門職の役割を明確化し,幅広い視点での評価体系を構築する必要性が示唆された.