地方公務員における飲酒パターンと睡眠の質:高松詩織ほか.富山大学医学部保健医学教室―目的 :本研究は,飲酒パターンと睡眠の質との関連性を評価することを目的とした. 方法 :T市の18歳から65歳までの全職員2,118名を対象とし,2008年6月,自己記入式質問紙法による横断調査を行った.ロジスティック回帰分析を使用し,独立変数に飲酒パターン(頻度と1日に摂取するアルコール量を組み合わせたもの,1週間に摂取するアルコール量,タイミング)を用い,従属変数に日本語版ピッツバーグ睡眠調査票による睡眠の質を用い,飲酒,睡眠の質に影響を与える可能性のある,対象者の年齢,婚姻状況,要介護者の有無,飲酒習慣,運動習慣,喫煙習慣,仕事の特徴(職位,カラセックによる職域ストレス,交替勤務の有無),BMI,慢性疾患の有無で調整した.睡眠薬を使用すると回答した人と,記入の不備があった人を除いた男性661名(44.8±11.8歳),女性618名(39.0±12.7歳)を分析対象とした. 結果 :男性において,飲酒習慣がない人を基準とした場合の,1週間に1回以上の飲酒習慣のある人の睡眠の質が低いことに対する調整オッズ比は0.52(95%信頼区間:0.32-0.85)と有意に低値であった.また,飲酒習慣のない人を基準とした場合,毎日1-3杯飲酒する人の睡眠の質が低いことに対するオッズ比は0.32(0.13-0.84),1週間で7-14杯飲酒する人は0.30(0.13-0.70),食事時のみに飲酒する人は0.37(0.17-0.77)と,有意に低値であった.女性では,飲酒パターンと睡眠の質との間に有意な関連性を認めなかった. 結論 :睡眠薬を使用していない男性では,睡眠の質には,いくつかの飲酒パターンが関連することが示唆された. (産衛誌2010; 52: 1-11)