石綿外来・石綿健診の全国実態―実施医療機関を対象とした質問票調査結果報告―:長尾典尚ほか.関西労災病院救急部 ―旧石綿製品取り扱い工場の従業員や近隣住民等に中皮腫が多発していることが2005年6月に明らかとなって以来,石綿による健康被害が社会問題化した.その後,国民の健康不安に応答する形で,「石綿外来」や「石綿健診窓口」が全国の医療機関に開設されるに至った.そこで,石綿外来・石綿健診の実施施設を対象に,活動実態と課題を明らかにする目的で質問票調査を行った.有効回答137施設のうち,クボタショック以降に開設した施設が半数以上を占めた.石綿曝露歴の問診実施頻度では,「生活歴」,「居住歴」,「家族の職業歴」の項目が「本人の職業歴」に比べて低く,問診票を活用する施設は7割以上であった.また石綿診療担当医は「マンパワー不足」と「石綿曝露評価」で特に苦慮していた.受診者からの相談内容は,石綿関連疾患,石綿曝露,補償に関することのほか,多岐に及んでいた.中皮腫を初めとする石綿関連疾患は当面増加することが予測される中で,石綿関連疾患の早期発見と治療は喫緊の課題であり,その一翼を担う石綿外来や石綿健診窓口の役割は重要である.限られた資源を使い,有効な診断および治療とともに正確かつ効率的な石綿曝露歴の同定を可能にする診療支援体制を整備する必要がある. (産衛誌2008; 50: 145-151)