本研究は,作業と腰痛発生との関係を作業姿勢と生活習慣の両面から検討することを目的として,作業内容の異なる3つの職場(スリット職場,梱包作業職場,クレーン運転職場)を有する某中小企業従業員118名を対象とし,OWAS法に基づく作業姿勢評価とヒアリング調査を行った.その結果,OWAS法では3つの職場に共通して立位前屈姿勢の出現率が最も高かった.腰痛の状況については,全ての職場で70%以上の腰痛経験者が存在したものの3つの職場間に明らかな差は認められなかった.しかし,各職場ごとに腰痛発生の要因は異なり,カテゴリカル回帰分析及び問診の結果から,スリット職場においては過去の運動経験による腰痛発生への影響と加齢及び作業による腰痛の増悪が示唆された.梱包作業職場においては,経験年数の短い段階で移動している者が多いため,他の職場の腰痛有訴者率に影響を与えている可能性があった.クレーン運転職場においては,以前の職場での作業内容が腰痛発生に影響を及ぼしているようであった.本対象職場において,生活習慣よりも職場での活動の方が腰痛発生に大きく関与していると推定された.