大学の大人数授業では,受講する学生が多いために個人の名前の把握が難しい,テストや出席確認の用紙の配布,回収作業に多くの時間がかかる,学生の私語が多いなどの問題がある.さらに,学生理解度の個別把握が難しいので,スピーチスタイルの一方向の講義となりがちである.そこで,本学では大人数講義の授業改善のためにp-HInTシステムを開発し,2008年4月より運用した.p-HInTシステムでは,学生がニンテンドーDS(R)等の携帯情報端末から小テストや出席確認,また教員へ自由発言を行う.教員は着席順学生一覧で学生名を把握し,出席確認や小テストを最小労力で行うことのできるシステムである.本システム構築では,400台の低性能端末で安定接続を実現するために,AP配置やチューニング,通信量の削減,セッション管理等を独自に工夫した.本システムの授業への効果を確認するために,同一科目同一教員の28回の同一講義内容でp-HInTを利用したクラスと利用しないクラスを設定した.結果,p-HInTを利用した授業の論述試験の平均点が,p-HInTを利用しなかった授業の平均点よりも高くなった(有意水準5%のt検定).さらに,学生アンケートの結果,p-HInTによって授業の集中力や理解度が向上し,本質的な講義内容の説明時間が11%増加し,私語が25%減少した.みんなのこえ機能によって大人数講義でも教員と学生の距離が近くに感じることを確認した.