本論文では,オープンソースとして公開している,組込みシステム向けのマルチプロセッサ対応シミュレータについて述べる.本シミュレータは,マルチプロセッサ向けリアルタイムOSやアプリケーション開発の効率化を目的とし,既存のシングルプロセッサ用ISS(Instruction Set Simuator:命令セットシミュレータ)を拡張して,プロセッサ個数分のシミュレータを連携動作させることで,ISSの少ない変更で,マルチプロセッサ対応のシミュレーション環境を実現可能である.マルチプロセッサ対応のシミュレーション環境を実現するために,ISS間の(1)共有メモリ機構,(2)排他制御機構,(3)プロセッサ間割込み機構,(4)タイミング同期機構,を新規開発した.さらに,リアルタイムOSのアイドル処理を利用したシミュレーション時間の短縮手法を提案する.本方式は,本研究で対象としたISS以外にも適用することが可能である.