他のエージェントと交渉し提携を組むことは,自律的なエージェントが備えるべき重要な性質であり,協力ゲーム理論では提携したエージェントの集合が得た利得の分配方法(解概念)を提案している.著者らは,これまでにコアや仁などの従来の解概念を拡張し,インターネットのような匿名性の強い開環境に特有の不正行為の影響を受けない(匿名操作不可能な)解概念を提案している.しかし,これらの匿名操作不可能な解概念には,その表記/計算量が極めて大きいという問題点があった. そこで本論文では,シャプレイ値の公理系を拡張し,効率的に表記/求解可能な解概念である匿名操作不可能シャプレイ値を提案する.匿名操作不可能シャプレイ値は,いくつかの自然な公理により特徴付けられる唯一の解概念であり,常に一意に定まることが保証される.