計算論的メカニズムデザインは,分散された個人情報を持つ自律的意思決定主体(エージェント)の社会的決定と,計算量や通信コストといった計算機科学の概念を同時に扱う新しい分野である.ミクロ経済学やゲーム理論の概念及び知識と,マルチエージェントシステムや計算機科学の概念及び知識が必要となる.さらに,計算論的メカニズムデザインは,理論からダイレクトに応用が可能な分野の一つである.本解説では,古典的メカニズムデザインの基本概念を概説した後,組合せオークションなどの計算論的メカニズムデザインの基本問題を解説する.その後,現在,計算論的メカニズムデザインの分野で注目されている課題やテーマについて紹介する.