実社会の組織やInternetなど,相互に関係のある複数の要素からなる広い意味でのシステムは,要素をノード,関係をリンクに対応させることでネットワークとして捉えることができる.このアプローチにより,システムの性質をネットワークの構造的特徴として把握することが可能になる.たとえば,ネットワークの構造を解析し,その特徴をモデル化することで,システムにおいて重要な役割を果たしている要素の抽出や,システムの“つくり”に着目した比較や分類ができる.今まではそれぞれの分野に固有なものとして捉えられてきた様々なシステム―科学や工学がそれぞれ研究対象としてきた自然界のシステムや人工的システムなど―をネットワーク構造という観点から統一的に捉えたとき,システムの振る舞いや形成過程に関するより普遍的な性質が見えてくる.本論文では,このアプローチの狙いや意義そして可能性を示すため,ネットワークの構造解析,モデルの構築,解析やモデル化から得られた知見を利用した具体的な問題の解決という3つのテーマについて概説し,関連研究を紹介する.