本論文では,間欠的にシステムが利用される環境を考慮したソフトウェア可用性評価モデルについて議論する.これまでに提案されてきたソフトウェア可用性評価尺度は,特定の時点でシステムが動作可能かどうかに注目していた.しかしながら,実際の利用者の立場から見ると,使用していないときにシステムが故障してもその故障の発生は認知されない.言い換えると,システムを使用しているときにソフトウェア故障が発生するか,あるいはシステムの修復中に使用要求が起こった時点で,システム故障の発生が認知される.ここでは上述の状況を考慮して,使用中の失望確率,使用要求拒絶による失望確率,および修復中の失望確率という3つの新たなソフトウェア可用性評価尺度を導出する.使用要求の発生時間および使用時間間隔はランダムであるとし,ソフトウェアシステムの状態遷移の様子はマルコフ過程を用いて記述される.このとき,ソフトウェア信頼度の成長過程やフォールトの複雑度・修正困難度の上昇傾向,発見されたフォールトに対するデバッグ作業はいつも確実に実施されるとは限らないという不完全デバッグ環境がモデルに反映される.最後に,これらの評価尺度の数値例を示す.