インターネット上のオークションでは,不特定多数の人間が商品(財)を販売しており,商品の質を正確に見極めるのは困難である.たとえば,骨董品が売られていたとしても,その骨董品が本物であるか偽物であるかを見極めることは難しい.もし買い手が,偽物の骨董品を高い値段で購入してしまった場合,買い手は,このオークションによって損害を被る.一方,損害を被ることを避けようとして,消極的な入札を行うと,本来ならば落札できていた骨董品が得られなくなる可能性が生じる.これは,オークションプロトコルが,財の効率的な配分に失敗していることを意味する.そこで,本論文では,専門家に,自然の選択に関する情報を正しく申告させることによって,パレート効率的な配分を実現し,かつ,合理的な参加者が損害を被らないようなオークションプロトコルを設計する.本論文で提案するオークションプロトコルは以下の4 つの特長を持つ.(1)専門家にとって真の申告をすることが支配戦略である.(2)専門家の人数に関する仮定の下で,素人にとっても,真の申告をすることが最適反応戦略である.(3)パレート効率的な配分を実現する.(4)非合理的なプレイヤが存在しても,その数がある閾値以下なら,合理的なプレイヤの効用が負になることはない.