1991年12月に,高知県内にある全特別養護老人ホーム32施設およびそこに勤務する介護職員555名を対象に調査を行った.調査の目的は,介護職員の腰痛症とそこの入所者の日常生活動作(以下, ADL)における要介助率との因果関係を明らかにすることである.腰痛症の作業関連要因を調査するため,腰痛に関する質問票を各介護職員に配布し,一方で,各特別養護老人ホームの入所者の状況等に関する質問票を各施設の主任介護職員に対し配布した.これらの資料より,次のような結果が得られた.介護職員における腰痛有訴率は, 77.0%と高い.そして,腰痛のある介護職員は,患者介護作業において負担が大きいと感じており,腰痛のない介護職員よりも,職場条件や作業環境に対し,不満を訴える割合が高かった.そして, ADLの介助が必要な入所者の割合が高い特別養護老人ホームほど,そこで勤務する介護職員の腰痛有訴率が高い傾向が認められた.この結果は,多変量解析を用いて,他の要因を考慮した場合においても認められた.したがって,この調査より,特別養護老人ホームの介護職員の腰痛症の要因として,患者介護作業量が重要であることが明らかになった.