本論文は,『産学連携学をどう確立するか』を当面する課題とし,関わる問題を整理することを目的とする.そのためには,学考察を構成する要因と考察を進めるプロセスの2つが重要と考え,この2つを考察するガイドとして,産学連携学会の設立前から現在に至る種々の取り組みを振り返りつつ考察する.その中には既に多くのファクターが存在するが,さらに今後考えるべき問題についても整理する. 産学連携学会の設立に当たっては,『産学連携(学)』の本質を異種異質なものの連携融合による『知の生産』と捉え,さらにその事象を『知の生産』,『知的財産(としての権利)化』『知的資産の活用・産業化』という一連の循環,すなわち「知的創造サイクル」と呼ばれる事象循環の中に位置づけて考える立場を取った.本稿は,筆者が学会創立に関わった立場から基本的に上記の限定の中で考察を行うが,しかしながらこの立場は,本学会の基本的立場として現在も揺るがないものと考えている. 以上を通じて,「産学連携は学になるのか?」という課題に答える出発点とし,また「産学連携学は何をもって社会に貢献できるか」という課題に対して問題提起としたい.