相互依存的状況における我々の反応は, 所与の状況そのものに対してではなく, 当該の利得構造に関する情報を処理し, 個別のものとして変換された後の状況に対して決定されていると考えられる。本研究は, 相互依存的状況における利得構造の認知過程を, 社会的価値志向性 (協同・平等・個人主義・競争) との関連から検討したものである。具体的には, 短期大学生女子159名を対象として1回限りの囚人のジレンマゲームを実施し, その後利得行列の要素を再生させた。利得情報の再生率が, 各価値志向性から予測される利得構造の変換プロセスとの関連から検討された。結果から, 利得情報に関する全体的な処理レベルや, 認知された利得構造の対称性に社会的価値志向性の効果が認められた。さらに各社会的価値志向性に固有の情報選好パターンが明らかにされた。これらの結果をもとに, 各社会的価値志向性ごとの選択決定過程について考察し, 情報処理能力と協力傾向の関連可能性について論じた。