本研究は, 日本人の帰属における自己卑下・集団奉仕傾向の共存を実証することを目的に行われた。検証された仮説は以下の通り。(1) 集団の中の個人は, 自らの遂行については自己卑下的帰属を行い, 内集団の遂行については集団奉仕的帰属を行う傾向が見られる; (2) 仮説 (1) の傾向は内集団の他者に好印象を与えるための自己呈示戦術と考えられるため, 内集団成員の前で公に帰属を表明するときに, より顕著に現われる。 成功状況を扱った実験1・失敗状況を扱った実験2の結果, いずれも, 仮説 (1) の通り, 帰属における自己卑下と集団奉仕傾向が実証された。この傾向は集団内の他者の自尊心への配慮の表れであると同時に, 集団を単位とした間接的な自己高揚の方策として捉えることができる。また, 仮説 (2) については2つの実験の結果は一貫していなかったが, いずれの結果も, 集団奉仕的帰属が, 単なる内集団他者への自己呈示戦術ではなく, より内面化された傾向であることを示唆するものであった。