本研究は, 特集号のテーマである「データとして会話」について, その解題を行うものである。まず, グループ・ダイナミックスが, データとしての会話に着目するに至る理論的背景を整理する。これまでの心理学が個体に内在する「心」の存在を前提としてきたたあに, 共同行為としての会話に正当な理論付けを行う志向性に欠けていたことを指摘し, グループ・ダイナミックスにおいて, データとしての会話を復権させるための理論的根拠を示す。次に, これからのグループ・ダイナミックスが, データとしての会話に着目していく際に直面する方法論的・理論的諸問題を整理する。