本研究は“客観的・非社会的手段が利用できない場合には他者との比較により意見・能力の評価が行なわれる”というFestinger (1954a, b) による社会的比較過程理論の基本的仮説を直接的に検討することを目的とする. Crutchfield型同調実験に類似した場面において聴覚判断材料を用い, 被験者の判断に対する客観的判定を示すか否か, また示した場合それは被験者の判断を支持するものか否か, および判断課題の難易度を操作し, それらの要因が他者の判断を知ろうとする行動の生起に及ぼす効果をみた. 自己の判断の当否への客観的情報が示されない場合, および客観的情報が示されそれが自己の判断を支持するものである場合, 他者の反応を知ろうとする傾向は多くみられた. 逆に自己の判断を支持しない情報が呈示された場合には他者の判断を知ろうとする行動の生起は最小であった. また課題の困難度の影響はみられなかった. このような結果から, 社会的比較過程には情報的・規範的の2つの機能が含まれる可能性が従来の知見との関連において示唆され討論された.