日本人には自分を「ふつう」よりも「ふつう」であると知覚する傾向がある(Ohashi & Yamaguchi, 2004)。このように自分の「ふつうさ」を過大視することから,日本では人を形容する言葉としての「ふつう」に望ましい意味が付与されていると考えられる。本研究は,「ふつうであること」は好意及び望ましい特性と結びついてとらえられているという仮説を立てた。大学生150名及び社会人61名にある一定の条件にあった人物を想起させ,その印象を測定する方法で,「ふつうの人」は,「ふつうではない人」よりも好かれていると知覚されていることを示した。さらに,「ふつうの人」の印象は「良い意味でふつうの人」の印象に近く,「ふつうではない人」の印象は「悪い意味でふつうではない人」に近いか(大学生)「良い意味でふつうではない人」よりも悪かった(社会人)。固有文化心理学の立場から理論的な考察を行った。