日本の高校教育は,高校全入の時代を迎える一方,多数の不本意入学者や高校中退者という新たな困難に直面している。サポート校は,こうした事態に対応するものとして生まれ,現在まで急速に発展してきた。サポート校とは,通信制高校に在籍する生徒の卒業資格取得をサポートする私塾であり,不登校や高校中退を経験した生徒が数多く通っている。本研究では,あるサポート校C学院においてフィールドワークを行った。C学院における教育実践は,以下の3つの特徴―(1)教師と生徒が親密な関係にあること,(2)ふだんの授業では,学習よりも生徒が学校を楽しいと感じることが重視されており,高校卒業資格取得については特別な授業が設けられ,徹底した指導が行われていること,(3)教師が生徒一人一人に合わせた丁寧な対応を行っていること―を有していた。これらの特徴が,C学院に多く在籍する,不登校経験のある生徒や学力の低い生徒にとって有効であることを,事例研究から明らかにした。このように,サポート校における教育実践は,一般の学校にはない意義を有するものであるが,サポート校は学校教育を代替することはできない。その理由を,「制度化された教育」と「制度化されない教育」(林,1994)という観点から考察した。「サポート校=制度化されない教育」と「学校=制度化された教育」では,常に後者に正統性が与えられるがゆえに,サポート校は困難や矛盾を抱えることになる。意義と矛盾を共に抱えこむサポート校のあり方は,われわれが暗黙のうちに支えている学校教育制度の正統性に疑問を呈し,その再考を迫るものである。