背景と目的 病院を運営するということは、病院の管理運営に当たるスタッフが、病院の目的を達成するため、限られた医療資源を有効活用し、情報に基づき意思決定を繰り返すことである。そのために病院管理専門家は、意思決定に必要な根拠に基づく情報を、必要なときに、分かり易い形で報告できる体制を整備することが重要な活動となる。情報の整理という視点から、病院へ部門別原価計算を導入したスリランカでの活動を報告する。 活動 2005年10月から2007年10月まで実施された、「スリランカ国保健システム管理強化計画」開発調査フェーズIIにおいて、スリランカ北西州からパイロット病院として国立病院(第三次医療機関)と県立病院(第二次医療機関)それぞれ1箇所ずつを選び、診療情報と会計情報の現状調査を実施後、実際に部門別原価計算システムを導入し、月次で報告書が作成される体制を整備した。 結果 今回の調査では、調査初期段階から保健省や財務省関係者に対して、原価計算の病院運営面での必要性や、政策立案への有効活用などを説明しながら活動してきた。しかし、医療や保健に費やす詳細なコスト情報の収集・分析の必要性や重要性が、保健省や財務省関係者に理解されるようになったのは、彼らが自分達の病院で自分達の手で原価計算を実施した結果として、具体的に得られる情報が明らかになってからであった。 考察 今回、病院情報の基盤づくりを目指し、部門別原価計算を管理会計手法として病院へ導入することにより、病院全体を網羅した会計面、診療面での病院運営に必要な情報を整備できることが分かった。病院管理専門家の活動は、病院の情報を整理・整頓する活動であると言える。そして、情報の整理を部門別原価計算導入という目標により実施することは、病院管理専門家の基本的な活動として有用であると考える。