右前頭葉に主病巣を持つ症例9例 (脳梗塞, 被殻出血,皮質下出血,脳挫傷,脳動静脈奇形,脳腫瘍) について半側空間無視を検出する検査 (臨床症状,同時知覚刺激,直線の二等分,線分抹消など) を行った.病巣の同定は X 線 CT にて行った.4症例には3週間ないし数ヶ月以上にわたる半側空間無視が存在した.この4症例の CT 所見から,前頭葉病巣が皮質下に広く広がり,大脳基底核に及ぶ場合か,前頭葉から頭頂葉に至るような病巣の場合に半側空間無視が起こりうると考えた.そして症状の持続は皮質および皮質下に限局した病巣では短く,大脳基底核や視床にも及ぶものは長かった.一方5例の半側空間無視の存在しなかった症例の CT 所見は病巣が前頭葉底面,前頭前野に限局し,基底核病巣では皮質と視床との繊維連絡を断たない程度の大きさであった.従って,右前頭葉病巣による半側空間無視のメカニズムは視床や頭頂葉への繊維連絡の途絶によって説明されると者えた.