超皮資性失語の一例に観察された種々の強迫的行動について考察した.即ち具体的には, 強迫的な物品の操作・探索・確認,質問の強迫的復唱と文字・数字の強迫的音読 (聴覚的・視覚的反響言語) ,常同的な反復行為・「決まり文句」, 等である.この異常行動群を理解するためには, これらを個別に取り上げて, その神経回路と障害発生機序を別々に考察する「神経学的」方法よりも,個々の行動異常の背景により一般的な器質性の「強迫傾向」とも言うべき精神病理学的病態を想定する「精神医学的」な考え方の方がより正鵠を得ているのではないかと考えた.神経心理学に於ける精神医学的視点の欠くべからざる所以を論じ,これを結論として述べた.