左前頭葉脳内血腫術後後遺症として超皮質性感覚失語を呈した症例を報告した.本例の脳損傷部位は主として左前頭葉に含まれるが,後の MRI の所見よりこの病変が左基底核前部外側にも伸長していることと,手術中に左側頭葉前端部にも小病変が観察されていることが注目された.これらの病変は前頭葉のかなりの部分を占拠し, Broca 領野の少なくとも一部は侵襲されていると思われるが,失語像には非流暢性要素に乏しく,反響言語,保続,語性錯語,空語句の優勢な超皮質性感覚失語であった.本報告に於いては特に言語の反響・反復症状を取り上げ,観察された強迫的または自動的な音読現象を 「視覚性反響言語」 として位置付ける立場から検討した.超皮質性感覚失語の病変部位の問題について若干の論ずるところがあった.