失語症者18名に対して呼称課題と呼称目標語に関する意味判断課題を実施し,意味的障害と呼称課題における正答数および誤反応の出現傾向との関係を検討した。意味判断課題の成績は呼称正答数と有意な正の相関を示し,無反応数と有意な負の相関を示した。失語症群を意味判断課題の成績によって二分したところ,意味判断課題の成績は,意味的障害の重い群では呼称正答数と有意な正の相関を示し,意味的障害の軽い群では修正努力を伴わない意味性錯語と有意な負の相関を示した。これらの結果より,呼称障害に対する意味的障害の影響は意味的障害の強さによって異なることが示唆された。意味的障害が強い場合は,その影響は無反応として現れる傾向があり,意味的障害が軽い場合,その影響は誤りの自覚を伴わない意味性錯語として現れる場合が多いのではないかと考えられた。意味的障害と誤りの自覚を伴う意味性錯語との関係は支持されなかった。