日本音声言語医学会言語委員会失語症小委員会では1993年から「失語症語彙検査」の開発に着手し,現在までに中核部分の諸検査 : 語彙判断検査,名詞・動詞検査,類義語判断検査,意味カテゴリー別名詞検査を作成した。本検査の目的は,脳損傷患者の単語の表出・理解機能を多面的に評価し,言語病理学的診断と治療に役立てることにある。本検査の概要ならびに50名の健常者に実施した結果についてはすでに報告した (藤田ら 2000)。 本論では,本検査を用い,失語症患者の語彙障害の解析を行った。その結果, (1) 単語処理における音韻・文字・意味など各処理機能の乖離, (2) 名詞の意味カテゴリーによる特異性, (3) 品詞による特異性,などが検出された。本検査は,失語症患者の語彙障害の特徴や障害構造を解析するための手段となり,また,治療プログラムの作成・治療効果の測定などにおいても,有用な情報を提供すると考えられた。