トライアングル・モデルは,文字層,音韻層,意味層を中間層を介して相互に結んだ並列分散処理型のシミュレーション・モデルである。われわれは,漢字語,仮名語,非語を同じ計算原理で処理するトライアングル・モデルをコンピュータ上に構築し,まず健常成人の音読における単語属性効果を再現した。そのうえで,表層性失読を意味レベルの障害,音韻性失読を音韻レベルの障害と仮定し,モデルの意味層および音韻層に関与する部位を損傷させることで,2つの失読症の誤読特徴を再現した。同様の結果は,英語圏におけるシミュレーション実験においても得られており,トライアングル・モデルが音読プロセスのモデルとして妥当であることを示している。本稿では,なぜトライアングル・モデルが,人間と同じふるまいをすることができるのかを考察する。