痴呆を伴う慢性期失語症患者 26例 (平均年齢 70.5歳) に,痴呆患者へのアプローチ法を取り入れたグループ言語訓練を実施した。訓練の特徴は (1) 劇,屋外活動,料理などを柱として,遊ぶ・笑う・楽しむことを前面に出し,その中に呼称,音読,書字など言語訓練的要素を意図的に組み込む, (2) 日ざしを浴びるなどの活動を重視し情動面に働きかける, (3) 見当識の強化,(4) ST,CP,OTなど多職種がかかわる,などであった。結果は,SLTA総合評価法において全体的には小幅ながら改善傾向を示し,なかでも発症から比較的短期で痴呆の程度の軽い症例は改善率が高かった。また,コミュニケーション行為評価表では 18例中 14例が改善し,項目別では見当識,状況判断,注意持続などコミュニケーション能力の基盤となる項目が改善した。痴呆を伴う慢性期失語症患者の増加が予測される今後,このようにグループ言語訓練を工夫し積極的に活用していくことが重要であると思われた。