1失語症例の仮名音読と仮名の書取について,50音表活用における情報処理過程という観点から検討した。本症例は仮名音読に障害を認めたが,実際に表を見ずに50音を唱えていき,目標とする文字に該当する位置で止めることによって正しく音読できた。一方,仮名1文字の書取においては同様の方法が活用できなかった。本例における検討から,50音の音と文字の系列はそれぞれ別々に保存されうる可能性のあること,50音系列を介しての仮名1文字の音読と書字は入・出力経路によって独立に障害される可能性のあることが示唆された。