Alzheimer 型痴呆 (以下,DAT) 患者11例のエピソード記憶について,感覚入力系の違いによる,直後再認と5分後再認を検討した。記憶テストは,視覚 (線画,図形) ,聴覚 (単語,楽器音) ,味覚,嗅覚,触覚の5つの感覚系,計7種類である。それぞれ,5項目の刺激課題と10項目の再認課題からなる。その結果,DAT群の直後再認率は,視覚 (線画,図形) ,聴覚 (単語) ,触覚,味覚,聴覚 (楽器音) ,嗅覚の順に高く,そのうち視覚と聴覚は5分後の再認率が有意に低下した。また,コントロール群との比較では,DAT群は直後再認,5分後再認ともにコントロール群に比べ視覚,聴覚,触覚が有意に低下したが,味覚,嗅覚はコントロール群と同等に保たれていた。このことからDAT群の嗅覚,味覚の記銘・保持能力は,他の感覚系に比べて保たれている可能性が示唆された。