一般に失語症患者は,自己の言語障害に対して, awareness を有しているように思われる。しかし,「話す」側面と「聞く」側面では awareness にちがいがあることを臨床的に経験する。そこで,訓練意欲のある30例を対象に,「話す」「聞く」の側面別に,2種の主観的評価,すなわち,困ることの有無 (「困難度」) および病前の言語能力に比較した現在の言語能力の程度 (「言語能力」) を評価させた。これを言語能力に関する2種の客観的評価,すなわち失語症鑑別診断検査 (老研版) および実用コミュニケーション能力 (CADL) 検査の成績と比較した。その結果,「話す」側面の障害に対しては,高率で awareness を有していたが,「聞く」側面に対しては awareness が低下している例が多いことが明らかとなった。