この論文で,脳損傷後に吃様症状が出現した2症例の発話症状を述べる。症例1は頭部外傷後に,症例2は脳血管障害後に吃様症状が出現した。 発話サンプルは,日本音声言語医学会によって考案された吃音の分類にしたがって分析した。 従来の研究論文では,「音・音節の繰り返し」「引き伸ばし」「阻止」「間」と「とぎれ」の5種類が報告された。われわれの2症例では,これら5種類に加えて複雑症状,連続症状,複合症状,連糸症状など 11~12 種類の症状が見られた。われわれの症例では運動症状が見られたが,「吃音に随伴する運動」とは異なっていた。 従来の報告によれば,吃様症状のケースでは,適応性効果は見られなかったが,われわれの症例1ではこの効果が見られた。さらに,症例1においては吃様症状の改善過程で,発話症状の数の減少と単純な症例の割合が増加した。