失語症タイプ間の音の誤反応の差異を検討した。従来の単一モダリティでの分析に対し,本研究では,呼称,復唱,漢字・仮名音読の発話4モダリティ間の誤反応の共通性を検討した。誤りパターンは, Broca 失語,伝導失語は4モダリティにほぼ共通していたが, Wernicke 失語はモダリティによって異なっていた。誤り方は伝導失語と Wernicke 失語では,置換と転置がほぼ9割を占めたが,その割合は症例によって異なっていた。 Broca 失語では最も大きな割合を占めた誤り方が症例によって異なっていた。 以上から,単一モダリティでの分析よりも発話4モダリティ間の誤反応の検討が失語症のタイプ間の分離に有効と考えられた。また誤りパターンが4モダリティで共通だった Broca 失語と伝導失語では,音の誤りは各発話モダリティに共通の発現機序で生じ,モダリティごとに誤りパターンが異なっていた Wernicke 失語では,複数の障害によって生じている可能性が考えられた。