慢性期失語症患者6例に, Promoting Aphasics Communicative Effectiveness (失語症患者のための実用コミュニケーション能力促進法—略称 PACE ) を実施した。6例中3例に PACE の評価得点の有意な上昇, 6例中3例に初発時間, および6例中5例に伝達時間の有意な短縮を認め, PACE による情報伝達能力向上が示唆されたが, これは, PACE により本人なりの意志伝達様式を獲得したことと, コミュニケーション意欲が高まったことによると思われる。また, 院内生活コミュニケーション能力評価においても全例に何らかの得点変化を認め, PACE による情報伝達能力向上が日常生活にも良い効果を及ぼしていることが推察された。従来の刺激法は失語の impairment レベルに, 一方, PACE は disability レベルに主にアプローチすると考えられるため, 今後は, 従来の刺激法による言語治療を一定期間終了した後, あるいはそれと平行して PACE を実施するのが望ましいと思われた。