混合型超皮質性失語を呈した1例を報告し,局所脳血流からみた責任病巣と発現機序について考察した。症例は28歳の右利き男性で意識障害にて発症した。脳動静脈奇形の破裂による左頭頂後頭葉皮質下出血の診断で緊急手術を施行した。3週後には意識は清明となり,右同名半盲と失語症を認めた。言語学的には自発話に乏しく,発話は非流暢で呼称や語の想起は著しく障害をうけていた。しかし復唱は良好で,5~6語の短文でも可能であった。またしばしば反響言語を認めた。言語の聴覚的理解や文字の視覚的理解はともに単語レベルで障害をうけ,書字は全く不可能であった。CTでは左頭頂後頭葉に病巣を認め, Xe-enhanced CT では左大脳半球全体に血流低下を認めたが,言語野周囲の血流は比較的保たれていた。このことから本症例は言語野が周辺の大脳皮質から孤立した状態であると推察された。