本解説では,スポーツ流体の研究例として,スキージャンプの風洞実験と最適化計算例を紹介する.この紹介を通して,空気力測定は,それ以降の全てに影響を与える為,最重要であることを述べる.その上で,領域横断的なスポーツ流体のようなテーマの場合,単一の目的を強調するのではなく,調和,バランス,総合力が重要で,様々な目的をコンカレント(並行、同時)に取り扱わなければならない.スポーツでは,研究対象に人間が含まれる以上,感性や心理戦,戦略等にも配慮する必要がある.例えば,きれい,気持ちいい,といった感性に関する量をシミュレーション可能な物理量に変換する点が研究者の腕の見せ所である.1つ1つの対象に対して,丁寧な観察と洞察力によって,これらの変換作業を行うしかない,というのが現状である.