グルコース濃度のみ異なる3種の栄養輸液をラットに1週間投与し, ラットの成長ならびにタンパク質代謝に及ぼす影響を検討した。 あわせて同一カロリーを経口摂餌させた群を設け, 栄養素の投与経路の違いについても検討を加えた. 栄養輸液の投与効果は, 体重, 窒素出納血液性状ならびに臓器中のタンパク質含量および核酸量の変動などから判定した。 1) 末梢静脈から投与可能な5.0%グルコースを含む栄養輸液では体重の維持が不可能であり, 異化状態の亢進が認められた。 2) 完全静脈栄養用の14.8%および20.6%グルコースを含む栄養輸液では, 投与した栄養素は生体内で有効に利用され, ラットの体重, 窒素出納などを良好に保った。 これらの効果は投与カロリーの多い群で著明であり, 静脈栄養では体重保持に240kcal/kg/day以上のカロリー投与が必要と考えられた。 3) TPNを施行したラットでは, 手術侵襲の残っている時期には同一カロリーを経口摂取させた群に比べ, 体重, 窒素出納が良好であった。 しかし, 投与後半には経口栄養群が優位に推移した。 以上より, 完全静脈栄養法は手術侵襲などの特殊な環境下にある生体にとってとくに有効と考えられ, 投与された栄養素が体タンパク合成などに有効に利用されるものと考えられる。