近年, 友人関係の形成や維持を動機づけの観点から捉えた研究が増えてきている。しかし, これまでの友人関係研究との理論的な統合がなされていないため, 友人関係に対する動機づけという視点の独自性が明確ではない。本論文では, 友人関係研究と近年の動機づけ研究の知見とを統合し, 適応の支えとなる親密な友人関係が形成, 維持される過程を動機づけの観点から捉えるモデルを構築することを目的とした。最初に, 友人関係と適応や精神的健康との関連を示した知見を概観し, これまでの友人関係研究では, 親密な友人関係を築いているか否かの個人差が説明されていないことを指摘した。次に, 友人関係に対する動機づけを捉える概念を, 達成目標理論, 社会的目標研究, 社会的認知理論, 自己決定理論の観点から検討した。その後, 友人関係に対する動機づけを起点として, 適応の支えとなる親密な友人関係が形成, 維持されるプロセスを捉えるモデルを提唱した。このモデルから, 友人関係に対する動機づけ研究の独自性は, 適応の支えとなる親密な友人関係を築いているか否かの個人差を説明し得る点であることが示唆された。