本研究は, 冗談に対して親和的意図を知覚せずに, 聞き手に怒りを感じさせる冗談を過激な冗談として取り上げ, こうした過激な冗談の話し手が, 親和的意図が聞き手に伝わるという期待を形成する過程を関係スキーマの観点から検討した。大学生159名を対象とした予備調査から, 過激な冗談として,“倫理的・性的タブーに関する冗談”,“聞き手の悩みに関する冗談”,“聞き手の外見や行動に関する冗談”,“聞き手の好きな人や物に関する冗談”が同定された。次に大学生251名を対象とした本調査を行い, これらの過激な冗談の親和的な意図が聞き手に伝わるという期待は, 冗談関係の認知 (“冗談に対する肯定的反応に基づく他者理解感”と“冗談に対する被受容感”) に基づいていることが明らかとなった。特に,“冗談に対する被受容感”は全ての冗談において親和的意図が伝わるという期待に正のパスが見られた。“冗談に対する肯定的反応に基づく他者理解感”は性的タブーに関する冗談と聞き手の友人や恋人に関する冗談にのみ正のパスが見られた。また, 本研究から, 冗談関係の認知は, 冗談行動に相手が笑った頻度を背景として形成されることが示唆された。