これまでの身振りの発達に関する研究では, 主に乳児期の子どもに焦点が当てられ, 身振りの種類や機能, 初語獲得との関係が明らかにされてきた。近年では, 発話に付随する自発的な身振りへの関心の高まりと共に, 幼児以降の自発的身振りに関する研究も蓄積されてきた。だが, 自発的身振りの発達的変化については体系的に論じられることが少なく, どのように出現および変化するのかがよくわかっていない。本稿では, 自発的身振りの発達に関する国内外の研究を概観し, 幼児期以降の自発的身振りの発達と言語発達との関係を論じた。乳児期と幼児期以降にみられる身振りの分類を整理したところ, 1 歳代後半には発話と同期した自発的身振りが出現しはじめ, 初語獲得前後に出現した身振りは徐々に減少していくことがわかった。さらに, 自発的身振りが“発話のための思考”の習得や物語る能力と共に変化していくことから, 自発的身振りは語彙レベルのみならず, 文構造や物語の発達と関連していることが示唆された。以上の知見から, 身振りは複数の発達経路を持つこと, そして, 身振りは単独で発達していくのではなく, 発話と共に発達を遂げていくことがわかった。