青年の自己愛傾向が注目され, 近年国内外において多くの研究がなされるようになった。しかし一方で, それらを概観し, 知見を統合する試みはほとんどなされていない。本稿は, 正常な人格における (特に青年の) 自己愛について, 主に自己愛人格目録 (NPI) を用いてなされた実証的な先行研究を扱い, 自己調整的な枠組みから, 自己愛に関してこれまでに明らかになってきた知見を整理することを目的とした。そのなかで,(自我) 脅威を調整変数として捉えることの重要性が議論され, これまでの研究の問題点や今後の研究の方向性が議論された。また, 本稿では脅威を調整変数として位置づけることにより, 自己調整的な視点から自己愛を理解するための新たなプロセスモデルを提案した。おわりに, 青年の自己愛の意味および適応性について検討するための枠組みとしての本モデルの有効性について議論した。