本研究の目的は, 幼児期後期から児童期中期の子どもを対象に描画課題を実施し, 他者に情報を伝える意図をもつことで対象物の非視覚的性質の表現をどのように調整するか, その発達的変化を検討することであった。具体的には, 幼児22名, 小学校2年生20名, 4年生21名を対象に次の課題を実施した。まず, 対象児に外観が同じ2つの対象物の重さを区別する体験をさせた後に, それらの対象物の絵を自由に描かせた (自由課題)。続いて対象物の重さの違いを絵で他者に伝える意図を明示して, 再度対象物の絵を描かせた (伝達課題)。分析では, 対象児の描画と言語報告に基づき, その表現方略を年齢間で比較した。その結果, 自由課題では表現方略に年齢差がみられなかった。伝達課題では, 幼児では言葉による説明を付加しながら物語的に重さを伝える「継時付与方略」, 2年生では対象物の大きさの違いのみで重さを伝える「同時単独方略」, 4年生では媒介物 (例:シーソー) 等の非実在物を同時に提示することで重さを比較させる「同時付与方略」が多いこと等が示された。これらの結果より, 発達にともない他者にわかりやすく意図を伝える表現における質的な変化が示唆された。