学習者は, テストを受ける中で,“テスト作成者はこういったことを評価したいのだ”とその評価基準・意図を推察し, それにあわせて自らの学習行動を変化させることがある。本稿では, そのような現象を“テストへの適応”と呼び, 関連領域を包括的に概観しながら,1) 実証的にどのような形で支持されているのか,2) どのような教育実践上の問題点を持っているのか,3) その問題を解決するための視点として何が考えられるか, の3点に関して検討を行った。実証的な支持に関しては, テスト期待効果研究と学習方略研究を取り上げ, それらを統合的に捉える仮説を提出した。問題点としては“学習行動の危機”と“妥当性の危機”という2点を指摘した。最後にこれらの問題を解決するために, テストワイズネス・テストスキルの個人差の排除, 新しい評価 (alternative assessment) の導入, インフォームドアセスメント (informed assessment), 妥当性概念の拡張, 表面的妥当性への意識, という5つの視点を提出した。