本研究では, 大学生の主体的な自己形成として自律性, 可能性追求意識, 現状改善意識を取り上げ, これらに影響する内的要因として本来感, 自己価値の随伴性, 自尊感情を検討した。以上の変数を測定する尺度を含んだ質問紙が大学生男女220名に実施された。邦訳された自己価値の随伴性尺度についての尺度分析の結果, その信頼性と妥当性が確認された。多変量重回帰モデルを検討した結果, 本来感は自律性, 可能性追求意識, 現状改善意識に正の影響を与えており, 自己価値の随伴性は自律性には負の影響を与えている一方で, 現状改善意識には正の影響を与えていた。また, 自尊感情は自己形成に影響を与えてはいなかった。以上の結果から, 大学生の主体的な自己形成の理解において, 単なる自尊感情の高低に注目する視点を精緻化させ, 本来感と自己価値の随伴性を考慮する有用性が考察された。